【コロナ禍に知りたい法律コラム⑤】外注?業務委託?…偽装請負に注意しよう!

楽しかったパラリンピックがついに終わっちゃいましたねー( ;∀;)
わたしは、巨大なオリンピック利権も、この時期の強行開催も、チープな開会式や謎のイベント関係者らへの税金のムダ遣いも、今でも反対の気持ちですが、スポーツは好きです。
特にパラリンピックは、こんなにインスパイアリングでアメイジングな瞬間には、そうそうお目にかかれないと思うほど、驚きと感動の連続なので大好きです。
独立開業したらゼッタイ、リアルタイムで見てやる!」と誓っていたので、この夏は、時間が自由だという個人事業主(兼経営者)の利点をフル活用し、大いにテレビの前で楽しみました。
選手の方々に心から敬意と感謝をお伝えすると共に、障がい者の方々の競技環境や生活環境がもっと良いものになるよう、わたしも非力ながらお力になっていきたいと思います。

さて、前回と前々回は、コロナ禍での正社員・非正規社員の解雇についてお話しましたが、「コロナの感染拡大による経営状況の悪化で、これ以上雇用を維持することは正直苦しいが、さりとて従業員を完全に見捨てるのは気の毒だ…」ということで、従業員を個人事業主にならせて、「外注先」という扱いにする企業も出てきています。
つまり、「雇用契約から委任契約又は請負契約に切り替えることで、従業員の収入源を維持してあげよう」というわけです。

また、コロナ禍でテレワークを導入している企業の中にも、「社外での労働時間を管理するのが難しい」という理由から、従業員を独立した個人事業主にして、契約形態を業務委託契約に切り替える会社も出ています。

このように「外注先」や「業務委託先」に切り替える際には、「偽装請負」と認定されないよう気をつけましょう!というのが、今回のお話です。
本日も、国連の国際労働機関(ILO)への派遣経験を持つ弁護士福永智子が、はりきってお届けします!

1 偽装請負とは、なんぞや?
偽装請負とは、労働者に個人事業主として届け出をさせて、請負契約あるいは委任契約(業務委託契約)を結びながら、実態は従業員の指揮命令下で働かせるものを言います。

請負契約や委任契約の場合は、労働基準法、最低賃金法、労災保険法などによる様々な法規制がかからないので、企業側にとっては、雇用契約と比べて自由度は非常に高くなります。
具体的には、有給・休憩・休日を与える必要はなく、時間外・深夜・休日手当も不要で、支払金額から社会保険料を控除する必要もありません。また、契約解除のルールも、雇用契約のような法律上の規制はありませんから、当事者で決められます。

しかし、契約の性質というものは、契約内容や契約の名称によって決まるものではなく、「実際、どのような状態にあったか」という「実態」によって判断されます。

したがって、「企業の指揮命令監督の下に業務を行わせる」という雇用の本質があるなら(※)、契約書上は「請負契約」「委任契約」「業務委託契約」などとタイトルをつけていても、法律上は「雇用契約」になるのです。

ですので、べつに当事者が「偽装しよう」などという悪意を持って契約したわけじゃなくても、偽装請負は成立します ( ゚Д゚;)ヒョエ~

※この使用従属性(労働者かどうか)は、①仕事の依頼や業務の指示等に対して諾否の自由があるか無いか、②業務の内容や遂行方法に対する指揮命令を受けているかどうか、③勤務場所・時間についての指定・管理を受けているかどうか、④労務提供の代替可能性の有無、⑤報酬の労働対償性、⑥事業者性の有無(機械や器具の所有・負担関係や、報酬の額など)、⑦専属性の程度、⑧公租公課の負担(源泉徴収や社会保険料の控除の有無)といった要素を総合的に考慮して判断されます。

2 偽装請負と認定されたら、どうなる!?
労働基準監督署や裁判所から、「外注先って呼んでるけど、実態は雇用契約と同じじゃん!」と判断された場合、法律上は自社の社員の雇用契約とまったく同じ扱いになるので、残業代も社会保険も必要ですし、本コラム第2回でお話しした休業手当も必要となります。

また、労災保険も適用されます。
(実際、偽装請負が発覚する契機として多いのは、外注先(フリーランス)とされていた方が、業務中に事故にあったり、ケガや病気になった場合に、「病院での窓口負担の無い労災保険を使いたい」と思って、労基署に「偽装請負です!」と駆け込む時なんです。)

さらに、労基署が調査に入った結果、偽装請負であると認定されると、事業者(企業)にはいくつものペナルティーが課せられます。
特に「労災隠し」と認定された場合は、即座に書類送検され、事業者名が公表される可能性も高いです。企業には大ダメージですね。

まだまだ、それだけではありません。税務署からは源泉所得税の徴収漏れの指摘がなされ、延滞税や加算税も課せられます。OH MY GOD(´口`)↓↓!!
ちなみにコロナ禍に限らず、税務署はこの「外注・請負じゃなくて、ホントは雇用ちゃうんか!?」という論点が大好物です。
これまで私が見てきた実際の事案では、特に工事業者の2次請け3次請けといったケースに対して、税務署が課税して問題となった事案が多かったように思います。

それから、派遣労働で偽装請負を行った場合は、派遣法違反に問われると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。とはいえ、派遣業界では、そのウマミから、偽装請負が後を絶たないのですが…

3 まとめ
このように、「外注先(業務委託や請負契約)か、労働者(雇用契約)か」というのは、法律上も線引きがハッキリしていないので、よく問題になります。
具体的な線引きについては、上記1の(※)に書いたように、様々なメルクマールから総合的に判断します、というのが判例の考え方ですが、この総合判断というのは予測可能性が立ちにくいですし、一般の方にはムズカシイと思います。

ですので、コロナ禍で従業員を請負や外部委託に切り替えようという企業の方は、弁護士に相談しながら、事前に法務リスクを十分に検討されることをおすすめします。

逆に、「自分はいま外注や請負の扱いだが、実態は社員と変わらないような縛りや制限を受けている。残業代の支払いや労災保険の適用等を受けたい。」と思われている方々は、一度労基署の相談窓口や弁護士に相談していただくといいと思います。