【コロナ禍に知りたい法律コラム③】コロナ渦で従業員を解雇するときに気をつけてほしいこと!

ついに広島県にも緊急事態宣言が発令されましたね。経済と感染拡大防止の二兎を中途ハンパに追って一兎も得られず、いまや助けられたはずの命が尽きるのも、企業や事業者の体力が底をつくのも、ともに指をくわえて見るしかない、沈みかけの感染列島ニッポン!みなさん無事にお過ごしでしょうか💦

「無事じゃない!商売あがったりで死にそうだ!」という企業や事業者の方々もいらっしゃると思います(実際に当事務所にも、このコロナ禍で、企業、事業主、労働者を問わず、切迫した相談が多く寄せられています。)。

これからは、従業員の解雇というシビアな場面に直面せざるを得ない企業も増えてくるかもしれません。
そこで本日は、企業がコロナ禍で労働者を解雇する際に気をつけてほしい法律問題を、国連の国際労働機関(ILO)への派遣経験を持つ弁護士福永智子が解説します。

1 使用者が自由に解雇することはできない
いきなり結論から言うと、単に「コロナで経営が苦しくなったから解雇します」というのは、法律上は通りません。
まず、解雇は使用者が自由に行えるものではなく、労働契約法16条で、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は、権利を濫用したものとして無効とする旨が定められています。
とりわけ、整理解雇(業績の悪化や業務の縮小を理由とする解雇)については、労働者側に非はなく、使用者側の都合による解雇なので、その有効性は普通の解雇よりも厳格に判断されます。
整理解雇の場合、具体的には以下の4つの要件を満たしているかという観点から、解雇の有効性が判断されます。
① 人員削減の必要性があること
② 解雇を回避するための努力が尽くされていること
③ 解雇の対象者の人選基準、選定の方法が合理的であること
④ 解雇前に、解雇の対象者への説明・協議を尽くしていること(手続き面)

2 コロナ禍での解雇は有効か
では、これら4つの要件は、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する解雇では、実際どのように判断されるのでしょうか。

①人員削減の必要性(要件1)と解雇回避義務(要件2)について
2020年4月、タクシー業を営む会社が、コロナによる売上減少で債務超過に陥ったとして、従業員の大半を整理解雇した事案がありました。
解雇された労働者が解雇の無効を訴えたところ、裁判所は、「企業は、雇用調整助成金の活用によって、収支を大幅に改善させる余地があった」として、人員削減の必要性(要件1)を否定しました。また、企業が雇用調整助成金の申請をしていないのは、解雇回避努力(要件2)を尽くしたとはいえないとも述べて、結論として裁判所は、労働者への整理解雇を無効としたのです(センバ流通事件・仙台地決令和2年8月21日判例集未搭載)。
このように、コロナ渦での解雇が有効と判断されるかどうかは、雇用調整助成金など各種制度の申請・活用をしたかどうかという点が、非常に重要になります。

また、解雇回避義務(要件2)のハードルは、コロナ禍においても依然として高いと言えます。
具体的には、解雇の前に、たとえば役員報酬の削減、交際費など経費の削減、労働時間の短縮,希望退職の募集、賞与の削減,時間外労働の中止,配転・出向,新規採用の抑制、パートタイマー等の雇い止めなど、解雇以外の手段を講じる努力を行なっていない場合、解雇回避の努力を十分に尽くしていないと判断される可能性が高いでしょう。

③人選の合理性(要件3)について
さらに、要件3の「人選の合理性」については、コロナ禍においても、まずは正社員の解雇の前に、派遣社員、アルバイトやパート、定年後再雇用労働者(嘱託社員)、 契約社員といった順で、解雇を検討しなければなりません。
また、解雇の順番だけではなく、「なぜその人だったのか」という点についても、「客観的かつ合理的な基準に基づき人選を行った」という説明と証明ができるようにしておくべきです。

④手続の適正性(要件4)について
要件4の「手続の適正性」については、会社は労働組合や個々の労働者に対して、整理解雇の必要性やその時期・方法等を説明した上で、誠意を持って協議しなければなりません。
一般的には、従業員説明会を開催し、必要に応じて、個別の労働者との面談を行うなどして、十分な説明を行った上で、解雇を実施する必要があります。

3 まとめ
このように、単に「新型コロナの影響で売上が下がった」というだけでは、解雇の有効性は認められません。
そして、今日のコラムで分かるように、解雇の有効性はケースバイケースの判断になるため、実際に解雇を考えている企業は、法務リスクを回避するため、事前に弁護士に相談をされるのが賢明だと思います。