【コロナ禍に知りたい法律コラム①】企業・団体・学校が気をつけるべき、ワクチン接種に関する法律問題!

いまや絶賛コロナ感染爆発中の日本。頼みの綱とされていたワクチンは絶賛品切れ中で、私も妹も、毎日予約サイトにアクセスすれど全く予約が取れない状況が続いています。
本日は、そんな「オイ!いつになったら打てるんだ!」なワクチン接種について、企業・団体・学校に気をつけてほしい法律問題を、弁護士福永智子が解説します。
(実はわたくし、国連の国際労働機関(ILO)への派遣経験があり、企業法務だけでなく労働法も得意なのです✨)

目下「打て!打て!ムード」満載なワクチン接種ですが、法律上は、政府はもちろん、企業、団体、学校等が個人に対してワクチン接種を強制してはいけません。
新型コロナのワクチン接種は、予防接種法で国民の「努力義務」となっています。つまり、実際に接種するかどうかは個人の自由です。
なぜなら、ワクチン接種は検温やPCR 検査と異なり身体に直接入れるもので、副反応の報告もありますし、重篤なアレルギーや様々な体質でワクチンを打てない人もいるためです。
したがって、企業・団体・学校も、従業員や生徒に対してワクチン接種を要請することはOKですが、義務付けは不可能です。
また、ワクチン接種をしない従業員に対して、解雇や退職勧告をすると、解雇権の乱用に当たる可能性が高いです。さらに、懲戒処分等の不利益な扱いを行うこともできません

ところが、先行して接種が進む医療従事者や福祉施設の職員、看護学校の生徒などから、実際に不利益を被るような対応も報告されています。
日弁連が5月に実施した、ワクチン接種に関する無料相談会には、全国から208件の相談が寄せられました。
その中には、
・勤務先からワクチン接種を強要され、「過去に手術をしているので、医師から接種を控えるように言われた」と言うと、職場から「医師の証明書が必要だ」と迫られた
・持病があるため接種できないと勤務先へ伝えたら、退職を勧められたり、「打たなければクビ」と告げられたという介護施設の職員
・「ワクチンを打たなければ実習に参加させない(ゆえに、単位を与えない)」と学校から言われた看護学生
・「ワクチン接種しなければ退寮させる」と寮から言われた医学生
などの事例がありました。こうしたことは法律上問題がありますので、絶対にやめましょう。

それから、従業員それぞれについて、ワクチン接種を「受けたか」「受けてないか」、あるいは「今後受けるか」「受けないか」ということが分かるようなチェック表や名簿が職場に張り出された事例や、各従業員の名札にワクチン接種の有無を表示されたなどの事例も報告されています。
これらは、プライバシー侵害に該当する可能性が高いです。どんな医療を受けるか・受けないかということは個人情報なので、誰がどのような選択をしたかが分かるような形で公にすることは、配慮不足として問題になります。
さらに、接種を受けられない理由をしつこく尋ねることも、ハラスメントになりますので注意してください。病気や不妊治療が理由の場合もあり、プライバシー侵害になりかねません。

🌟 ワクチン摂取しない従業員の配置換えは?
他方、ワクチン接種しない従業員の配置や仕事内容を変えることは、真に必要な措置なら、ハラスメントにはあたりません
例えば、実際にクラスターが発生した高齢者施設で、ワクチン接種しない従業員を利用者と直接関わる現場から一時的に外し、事務職や後方支援に当たらせるケースについては、摂取していない人の方が感染リスクが高いのは事実なので、従業員本人や施設利用者への合理的な配慮と言えます。
しかし、感染が収束しても元の役割に戻さなかったり、あるいは、全然ワクチン接種の有無と関係ないような遠隔地に異動させたりということは、単なる差別なので不適切です。
また、医療や介護の現場ではない、健康な顧客を相手にする販売業や営業職で、ワクチン接種していない社員を営業の現場から外す措置は、行き過ぎの対応なので「必要な措置」とは言えないと考えられます。

🌟 まとめ
このように、ワクチン接種を呼びかけることはOKですが、強制するような言動や措置はNGです。そして、企業・団体・学校側の摂取の呼びかけ自体も、無言の圧力や同調圧力がかかったと取られないよう、「最終判断は個人に任せるし、摂取しなくても不利益な扱いはしない」旨をハッキリ明示しておくべきでしょう。
ワクチン接種について企業が不適切なことをすると、労基署から指導を受けたり、労働者からあっせん手続きなどを提起されかねませんので、気をつけてください。
また、接種を強制されたり不利益処分を受けたりした労働者や生徒の方は、今日のコラムの内容を会社や学校等にお話しいただき、それでも解決しない場合は、労基署や労働組合、弁護士などにご相談いただけたらと思います。

次回の「コロナ禍に知りたい法律コラム②」は、「コロナ禍の企業の休業対応」についてお話します。お楽しみに!