元国税審判官の弁護士が教える、「確定申告会場ではこれに気をつけて!」(その1)
毎年大勢の人が押し寄せる確定申告会場。いまやすっかり日本の冬の風物詩となりましたね(…ホントか?)。
そんな申告会場での出来事について、例年、数多くの「再調査」の請求や「審査請求」が申し立てられます。
「申告会場にいた職員に聞いたら、『こう書いてください』と言われたから、その通りに申告したんです! それなのに、その指導が間違っていたからって、私に過少申告加算税と延滞税を払えというのは、おかしくないですか!?ヽ(`Д´)ノプンプン」
このような納税者の方々の訴え、私もたくさん見てきました。税務署の職員の言うことなんだから、信じて当たり前ですよね。
でも、結論から言ってよいでしょうか?
確定申告会場での税務職員やスタッフの指導・アドバイスが、たとえ法律的に間違っていたとしても(そして、善良で忠実な市民が、その誤指導を信じたばかりに、所得額を過少に申告したとしても)、基本的に、過少申告加算税・延滞税は免除してもらえません!
え“ぇ”ぇーー!?そんなバカな!Σ(゚д゚lll)ガーン
なぜ免除されないのか、その理由を説明させてください。
まず、国税通則法では、税金を過少に申告してしまったことについて「正当な理由」があれば、過少申告加算税を免除すると定められています(65条4項)。
そして、国税庁長官発出の「事務運営指針」の中で、「確定申告の納税相談等において、納税者から十分な資料の提出等があったにもかかわらず、税務職員等が納税者に対して誤った指導を行い、納税者がその指導に従ったことにより過少申告となった場合で、かつ、納税者がその指導を信じたことについてやむをえないと認められる事情がある場合は、『正当な理由』に該当する」と書かれています。
また、延滞税についても、国税通則法63条6項と国税庁通達で、上記の過少申告加算税と似たような免除要件が定められています(ほぼ一緒なので、詳細は割愛)。
「ほら!税務職員の誤指導を真に受けて間違った申告をしても、過少申告加算税と延滞税が免除されるって、書いてあるやないか!」…と思うなかれ。問題はここからです。
まず、確定申告会場で職員に誤指導をされた場合、ほぼ絶対に、証明ができません。
いつ・誰に・どういう誤指導をされたのか、証拠がありません。(録画していれば証拠になるかもしれませんが、確定申告会場で録画をしようものなら、フツーに怒られます。)
もちろん税務署の方も、申告会場での納税者とのやり取りについて証拠は残っていないし、職員も申告会場で誰にどんなことを言ったかなんて覚えていないので(仮に覚えていても、「忘れた」と言われればそこまで。)、たとえ再調査請求で課税庁に再度調べてもらおうと、国税不服審判所に職権で調査をしてもらおうと、間違いなく、分かりようがありません。
結果、異議申し立て手続きを取ったとしても、残念ながら、「誤指導があったかどうかは、不明!」という調査結果ないし裁決をもらって終わりなのです。
その2につづく…