私が税務訴訟に特化した理由をぶっちゃける!〜その⑦〜

前回に引き続き、私が税務訴訟に必要なスキルを習得するまでのヒストリーをお送りします。今回は、「国税不服審判所 大阪支部編」です。

<理由 その7:とにかくがんばる福永 -世界にはばたけ!ワールドワイドな大阪編->

本所が言うには、審判所大阪支部の国際部門担当である一流弁護士の先生が、退任するに当たり、ご自身の後釜には「福永しかいない!」と推薦されたとのこと。

かくして、嬉しい気持ち半分怖い気持ち半分、想定外の白羽の矢にビビりながら、マンションのバカ高い中途解約金を払って大阪へ上京しました。

大阪支部に赴任した私の前には、神戸支所時代の人間味あふれる個人事件とは打って変わって、名だたる有名大企業の法人税関係の事件がズラッと並び、世界に数百社のグループ企業を有する大規模法人の国際課税事件、国内外に財産を有する超富裕層や海外スポーツ選手の国際課税事件といった、マスコミ報道もされるような大きな事件の担当審判官を任されるようになりました。

高度な税務・会計の知識や、移転価格税制、国際租税条約といった新たな税法知識を勉強せねばならず、国税局出身者や公認会計士らの助けも借りながら、夜空に赤々と光る大阪城を眺めては夜な夜な難解な文書と格闘しました。

こうした複雑困難な事件を担当して私が実感したのは、(税務訴訟全般に言えることですが、特にこのレベルの事件になると)法律家だけじゃムリ!税務の専門家だけでもムリ!両者の連携が不可欠で、しかも、互いに共通言語を話せないとダメ!ということです。

こんなちょっと難しい事件の司法判断をする際に何をやっていたかというと、まず「問題になっている税務・会計処理において、何が行われていたか」という、法律家には「アラビア語」にしか聞こえない話について、その道の専門家からレクチャーを受け、「あぁ、そういうことか」と自分の理解できる概念に解読したうえで、その「法律的な意味」を捉えます。

それを受けて法律家のフィールドに戻り、証拠から事実認定を行い、その事実を判例や法解釈を基に税法の条文にあてはめ、結論を出し、その思考過程を法的三段論法に従って文章(審判所では「裁決」と言い、裁判所の判決に相当します。)に落とし込む…という、ザ・リーガルマインドな作業をします(ここが法律家の腕の見せどころですね。)。

ただし、その結論や思考過程について、「税務・会計や課税の実務から見て、おかしくないか?非常識な結論や経験則が取られていないか?」という検討を耐えず入れながら進める必要があります。ある時、国税局出身の方々が裁判官の出した結論を見て、「この結論はあり得ない。この裁判官、借方と貸方の意味も分かってないんだわ。きっと簿記もやったことがないのね。」とおっしゃったことがありましたが、このように税務・会計の面で耐えられないような法理論を取ると、後で覆されてしまう可能性が高いのです。

こんな風に「税務・会計」の世界と「法律」の世界をワープするように自在に行き来する作業が必要だということが、税務争訟の特殊性だと思います。

そして、それをやるに当たっては、税務・会計の専門家も単に「アラビア語」をアラビア語で話すだけでは前に進まず、「その会計処理は法律的に言えば、何を意味するのか」という法律的な解読・転換ができなければ、法律家への橋渡しは困難です。他方、法律家の側も、借方も貸方も分からない状態では、一体相手が何を喋っているのかチンプンカンプンなので、やはり税務や企業会計に対する前提知識は不可欠です。

「新開地」から「新世界」へと華麗に夜の活動拠点をスライドした私が、苦労の末に悟ったこの教訓は、じつは、判断する側のみならず、弁護する立場になった場合でも、か・な・り!大切なポイントです。

その⑧につづく・・・