私が税務訴訟に特化した理由をぶっちゃける!〜その⑥〜

前回から、私が税務訴訟に必要なスキルを習得するまでのヒストリーをご紹介しています。今回は「国税不服審判所 神戸支所編」です。

<理由 その5:とにかくがんばる福永 -ボートレースとピンク盛りな神戸新開地で、怒涛の税法1000本ノック編->

私が国税審判官1年目に赴任を命じられたのは、神戸支所でした。その年、神戸は当たり年と言われる事件数の多さを誇っており、私は土日もクリスマスも返上で365日税法を猛勉強する日々を送りました。普通の弁護士同様に私も、それまで税法を学ぶ機会など無かったので、例えるなら、赤ちゃんが突然カールルイス並みのスタートダッシュを決めねばならない状態でした(古い…

富裕層が多い土地柄のためか、所得税、消費税、相続税といった個人の事件が多く、それに加えて中小規模の法人の事件など、バランスよく色々なジャンルの税法に関わることができました。場所によっては事件が少なくヒマで死にそうな審判所もあるそうなので、ある意味ラッキーだったかもしれません。

審判所には私のように外部から期限付きで来た人(弁護士以外にも、裁判官、検察官、税理士、公認会計士などがいます。)の他に、税務署職員の方々が大勢出向しており、彼らに税務面などをサポートしてもらいながら、一緒に合議体を組んで事件の調査を行い、最終的には裁決(裁判所の「判決」に相当するもの)を出します。

税務署出身者の多くはベテランで、「この税務調査、ヘタこいとるな~。もっとここを責めんかい!」「税理士にこんな風に体裁を整えられると、税務署はなかなか手が出せへんねん。」など、その道数十年の彼らの解説(関西弁)付きで、大量の事件記録や証拠を読みあさり、実際に税務調査を担当した税務署職員さんたちの裏話・苦労話や、調査を受けた納税者や従業員さんや税理士の先生の訴え、反面調査先の話などを聞いたり、実際に現場に足を運んだりする中で、それまで知らなかった税務や課税調査の実態について、まるでドラマのように生き生きと詳しく知ることになりました。

普通の弁護士をしていると、こういう課税現場の実態を知る機会はまず無いですが、私がいま専門にしている税務訴訟や税務調査の立合いという仕事は、現場のことが分からなければそもそも出来ないので、こうした審判官時代の経験は私の支えになっています。

ちなみに「神戸支所」というハイカラな名前がついていますが、実際は神戸の端っこの「新開地」という、巨大なボートレース賭場と歴史ある風俗街で有名な下町にありました。「通勤時間5分以内」を信条とする私が「新開地に引っ越したい。」と言ったところ、本気で心配した同僚に新開地交番へ連れていかれました。警察官が3人出てきて、「おねぇさん、ここは大阪の西成に匹敵するんだよ!?女性が一人で住める場所じゃないから、頼むから三宮にでも行って!」と説得されましたが、「ワタシ、職場から徒歩5分以内じゃないと生きられない体なんです。」と涙ながらに語り、以後、警官の皆さんの温かい見守りの元(犯罪が多く、暴力団抗争の銃撃もあったので、5分に1度くらいのすさまじい頻度でパトロールされていました。時々、安否確認の電話もくださいました。)、いつしか私は、朝は路上に転がる酔っ払いのおじさまたちの中をかき分け、夜は飲み屋のカウンターでお世話になっていたママを手伝い、税務署長に店のスタッフと勘違いされていたほど、新開地に馴染んだのでした。

こうして怒涛の神戸生活が丸1年を迎えた頃、本部から1本の電話がありました。

「福永さん、大阪支部の国際事件を担当する部門の審判官に異動です。」

その⑦につづく・・・